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◇李登輝氏 「世紀の饗宴」

 先日、台湾の知人に電話をしたところ、何やら周囲から物凄い熱気を帯びた人々の声が耳に入ってきました。聞くと「李登輝氏が帰国したので出迎えに来ている」とのことで、早々に電話を切られました。
 そうか、そういえば、李登輝前総統は去る10月11日から22日にかけて、アラスカを皮切りにアメリカ各地を訪問しておられましたっけ。
 しかし、日本の首相歴任者が外国から帰国したからと言って、こんなに熱心に出迎えを受ける人がいたでしょうか。相変わらずの凄い人気です。そんな政治家がお隣台湾に存在し、しかも相当な親日家であられるというのはうらやましくも嬉しくもあります。

 氏は、アメリカからも、何回か日本にメッセージを寄せてくれておりました。

 「台湾はいま中国の強大な軍事脅威にさらされています。その台湾の安全保障は日本の安全保障とも密接につながっています。台湾や日本の安全保障の危機は民主主義の危機でもあるのです」
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝への中国からの非難については、
 「一国の政府の長が戦争で死んだ自国民の霊に弔意を捧げるのは当然であり、他国から命令を受ける必要はないでしょう」と明言しました。
 李氏はまた「中国が日本に対し日本の首相の弔意表明のあり方についてあれこれ命令することは、おかしいです」とも語っていました。
 心強い日本の味方です。


 氏は各地での講演で、台湾の民主発展と中国の一党独裁を比較し、台湾の自主自立の重要性を解いて廻り、相変わらずの台湾の「顔」として、その存在感を強く印象付けました。
 最後の訪問地であるロスアンジェルスでは、最後の晩餐会に参加し、一時間あまりの長い演説を行いました。

 ロスアンジェスルの晩餐会は「世紀の饗宴」と名付けられ、37人の日本人を含む総勢2,139人が参加し、大盛況に終わったそうです。参加者のうちには遠くサンフランシスコ、アリゾナ、ネヴァダ、サンディエゴなど各地から八時間の道程を専用バスでやって来た人たちなども含まれました。

 日本では殆どマスコミでも紹介されていませんでしたので、以下に李登輝前総統が、二千人以上の海外台湾人に向けて台湾の現状と未来へ向けての展望など、多岐にわたって詳しく説明された演説の報告を、「台湾の声」から転載し、ご紹介させていただきます。


 李登輝の「世紀の饗宴」演説

●中華民国と大中華思想

 目前の台湾の状況を見るに、国内政治、経済情勢、国際関係など、すべての面で大きな困難に瀕している。これをどう導いて台湾の生存を図るかが最大の課題であります。

 戦後60年の間、台湾は蒋介石軍に占領され、49年に中華民国憲法を実施したが、すぐに戒厳令の発布に取って代わられ、それ以後の台湾人民は白色恐怖の弾圧下で暮らして参りました。私は苦労して戒厳令を解除し、民主制度を推進し、憲法を改正して総統の民主選挙を作り上げました。しかし6回にわたる憲法改正でも中華民国の名前は変えることは出来ない。1998年に私は「新台湾人」と言う名称を推進しました。これは多少の誤解はあったけれど、「新時代の台湾人」と言うことであります。中国人ではない台湾人であります。

 新台湾人は「私は誰か(W HO AM I)」と言うことに発する。私は台湾人であって中国人ではない、という認識を強めるものであります。
 中華民国は既に存在しない、ゆえに中華民国憲法も存在しない。台湾は主権独立した政治体であり、存在しない国名を棄てて「台湾共和国」を名乗らなければなりません。それには正名、制憲が必要であります。現政権が推進するような憲法「改正」ではない、中華民国の憲法は既に亡きものであるから、新しい国名、新しい憲法を制定する必要があるのです。

●群策会の創立

 私が「群策会」を創立した原因は、現政権のあり方が不確実でアイマイだからです。前にも申しましたように、群策会は政策の研究、李登輝学校の設立、国策論壇の創立と論文出版などを目的としています。これによって台湾人アイデンティティを確立するのがわれわれの目的であります。

 去年の二月に、群策会は「228牽手護台湾」を行い、台湾人アイデンティティを世界に知らせる運動をしました。この運動によって国民の本土意識の高揚があり、陳水扁は再選を果たしたのであります。
 しかし、当選した後の陳政権は政策が野党に振り回され混乱している。群策会は今後も続けてわれわれのアイデンティティの高揚を推進していくつもりです。つまり郡策会とは一般のシンクタンクとは違って、ThinkだけでなくAction、思想と行動を併せ持つ団体である。私はこれを「ドゥータンク(Do Tank)」と呼んでいます。

●立法院、野党の横暴

 しかし、台湾の現状を見るに、去年の立方委員選挙で過半数を取れなかった与党は雇うの横暴な反対にあって混乱、停頓の状態にある。
政局の混乱は野党の「反対のための反対」、理由なき国益無視の反対で、このままでは台湾の政局は麻痺し、台湾問題、国共分裂、領土問題、統一問題など、山積している大きな課題が解決できないままになる。これをどうするか、将来の処理方法を早急に考えなければなりません。

 現政権は与野党の政党合作とか、反対派の宥和などを主張しているが、相手が宥和に応じなければどうにもならない。相手が対立で政局の混乱を作るなら、政府はこれに対応する方法も考えなければいけない。単に宥和とか合作を呼びかければよいのではない。

●「扁宋十条」の齎した大問題

 そういう意味で陳水扁が宋楚瑜と会見した直後に「扁宋十か条」に軽々しくサインしたのは厳重な過ちである。この十か条とは亡国の合作であり、与党の主体意識の低下、民心の不安を増大させるに他ならない。現に民進党、陳水扁の人気は空前の下落を示している。

 このような現状を打破するためには群策会の主動で現政権に政策の再検討と勉励を与え、民間討論と各界の論述を推し進め、アイデンティティの確立と台湾の将来を討論することが大切であります。

●台湾アイデンティティの欠如

 台湾人には国家意識が欠如している。これは厳重なことですが、原因はたくさんあるが、一つは長年の白色恐怖で人民は自己アイデンティティの主張にさえも恐怖がある。このため国民に共同の国家認識がなく、アイデンティティの認識が不足、混乱している。

 第二の原因は永年の「中華思想教育」のため、中共の本質に対する認識が欠如していること。中共は安い労賃を武器にして中国大陸に投資させる、台湾も世界各国も挙って中国に投資する。しかも投資には大きな制限をかけて、資金の外流を阻止している。同時に台湾に対して武力恫喝をやめない。台湾のメディアは中国寄りになって
国民のアイデンティティ意識がなくなっている。

 これらの問題を解決するには教育と宣伝が大切ですが、現政権はこの二つに力を注いでいるとは思えない。われわれの課題は教育とメディア改革に尽力する事であります。

●「WHO AM I」の認識不足

 アイデンティティの確立とはつまり「WHO AM I」と問いかける事、個人及び国民大衆が台湾アイデンティティを持つように、教育、宣伝を怠らない事です。現政権はこの方面の政策が非常に不安定で、言う事がハッキリしない、そのため信用の失墜を招いている。

 これは困難な問題でもありますが、困難だからといって軽々しく「私には出来ない」など言ってはならない。困難は当たり前のことで、困難でもやり遂げるのが政治ではないか。やるとか、やらないとか、小手先だけで弁解や言い逃れをしても、結局は自分の信用が失墜するだけである。

●経済発展の問題

 次に経済問題。これは非常に厳重で、日本、韓国など、経済は上昇している、株価も上昇しているのに、今年の台湾は経済が低迷し、株価は下がったままである。これは目前の緊急問題である。

 台湾経済の強みは何かと言うと、ハイテク産業である。ところが政府は「開放政策」と称してハイテク産業が中国に移転するのを放任している。こんなバカなことはない。産業のうちにはハイテクのほかにローテクつまり労働力が主体となっている産業もある。台湾はハイテク産業で成り立っているのに、労賃が安い中国にハイテクを
移転させる事は自国の産業を滅ぼす事になる。低賃金の生産業を中国に移すのはよいが、同時に台湾国内でハイテクを国内で推奨しなければならない。

 次に農業と農産品の輸出問題。中国は甘言で台湾の農産品を買い入れると言うが、甘言に釣られて農業政策が中国の言いなり生産物を替えるようになれば、相手に買い叩かれる羽目になる。もともと農業問題はWTOでも永年のあいだ解決できないほど複雑なことで、政府がシッカリしていなければ台湾の農業も破滅の道を歩く事になる。
 敵の甘言に乗らないよう、早急に防御策を講じるべきである。

●国防政策について

 統一派が多数を占める立法院では国防予算を32回もボイコットしたが、国益を無視した野党の横暴さは世界でも知られるようになった。軍備予算は台湾にとって大切である。統一派の売国行為は国民全体が糾弾しなければならない。

 統一派が考えているように、中国軍が台湾海峡を渡ることは、連合軍がドーバー海峡を渡ったのとは違い、非常に困難である。野党の軍備購入ボイコットを続けても、むしろ民心の不安定、中国の心理作戦で不安になることを予防しなければならない。

 同時に台湾にとって大切なのはアメリカとの関係を強化し、台湾海峡の防衛を強化させねばならない。

●結論として

 結論として、われわれが直面している重大なことは台湾アイデンティティを強化し、国民の「台湾人意識」を60%から75%まで引き上げる事、こうしなければ2008年の選挙に勝つのは困難である。

 われわれの理想を世界に推し進めることは政府の責任だけでなく、人民が一体となって共同で推進すべきである。台湾共和国の正常化に向けて、正名制憲運動を続けていくこと、海外の台湾人も一体となってこの目的に邁進することが自立への道であります。どうもありがとうございました。


 ・・・「扁宋十条」のことは迂闊にも知りませんでした。
 陳水扁さん、最近心配ですね。7月7日の盧溝橋事件勃発記念日には、「今年は『抗戦勝利六十周年』に当る。我々はここに、敵と戦った軍のすべての英雄たちの犠牲的精神に対し、最高の敬意を表したい」と、演説していましたし、日本はいつ台湾の「敵」になってしまったのでしょうか。これではまるで国民党です。
 これは、中国ばかりを気にしてぺこぺこしている日本が、最早台湾にとって頼れる存在ではなくなってしまったということではないのでしょうか。
 小泉首相が新たに組閣をしなおしましたが、是非、新閣僚の人達に、アジアの人達に期待される日本再生に向けて、頑張って欲しいと思います。

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